ブランコに乗って
ブランコに乗って
低すぎる椅子に腰掛けて
「酔うよ」
と注意を受けて
漕ぎ出した
はじめはぐんぐん
漕いで
靴の底が土を削る
ザ、ザ、という音がして
わたしは風を感じた
しばらくして
「酔う」のが怖くなり
速度を落とすと
靴の底はより深く
地面を削り出した
ズ、ズ、
わたしたち
どこまで行けるんだろう
このブランコ漕ぎみたいに
おんなじ場所で進めずに
いるんだろうか
ザ、ザ、
そういう小説はよくあるけれど
心に残るほど
わたしに似た小説は
ズ、ズ、
いまだかつてない