くらむせかい

精神虚弱なぼっちヒキニート

わたしも命に嫌われている

わたしも命に嫌われている

 


反戦旗を掲げて

「戦争反対」って叫ぶ

その実夜は眠れず

追加ばかりしている安定剤

好きな人とも嫌いな人とも

話したくなくて

わたしも命に嫌われているって

話がしたくて

年金事務所で書類もらって

デイケア見学に来ていく服を

親に選んでもらう

通知が多いブックオフオンラインは

いいように使っているようで

いいように使われているのは

ほんとは

わたしのほうだ

命を軽々しく語れず

それほどひとが死んでいて

いっそ顔を背けて

逃げられるだけ逃げて

難民キャンプに戻り

税関で引っ掛けられて

ドイツの平和村に就職する

あの夢はどこに消えたの?

わたしも命に嫌われている

理由なんて掃いて捨てるほどある

命もわたしに嫌われている

あと何人連れ去ったら気が済むの?

新しく届いたスマホケースは

ベトナムかどこかの製品で

ミシンで彩る刺繍の世界

小さな世界

できるだけのことをして生きたいが

できることのひとつも見つからず

眠れない夜に

音楽を聴いてる

音楽がわたしを消してくれるなら

どんなにいいだろう

わたしも命に嫌われている

卒業式でもらった花束

野に咲く花を摘んだ一年

毎晩通った愛犬の墓

百歳になる祖父に届いた

銀の盃

それだけ?

それだけ?

「戦争だ」って号令かかり

シベリアに抑留され

丸太を切って積んで切って

ロシア人の目を欺いて

火にあたった人間最後の日々は

銀の盃

それだけ?

それだけ?

誰にも死んでなんか欲しくない

けれどだれにも生まれて欲しくない

こんな世界は生きるに値しない

そうだれかが今日も叫んでる

わたしは両耳にネジを巻いて

軋む音で身体を前へ

前へ

前へ

動かし続けてる

わたしも命に嫌われている

ほんとうに大切なことだとか

ほんとうに失くしちゃいけないものを

わたしは捨ててる

わたしにできるのは捨てることだけ

大事に守る力はない

大事に守りたいものもない

わたしにできるのは愛想笑って

「ほんとうにいいお天気ですね」

そんなだれにでも言えることだけが言える

わたしも命に嫌われている

なんど死のうとしてきたことか

なんど命を周りから奪われたか

なんど死んでしまったか

なんど死に損なってきたか

わたしも命に嫌われている

共感力もなく

ファッションも嫌いで

言葉ひとつでひとを殺すほど

重要な話を先延ばす

わたしも命に嫌われている

田舎だからと言い訳して

命の重みを議席に変えて

隣県とふたつでひとつだ

わたしも命に嫌われている

わたしも命に嫌われている

わたしも命に嫌われている

わたしも命に嫌われている

ようです