絶えて物言うことものなく
『テルーの唄』が好きだ。
だれにも聞かれない場所で、とても小さな声で歌いだす。初めはキーが合わない。わたしは音痴だ。二番に入ると少しずつ、思った声が出てくる。ゆっくりと二番は歌う。わたしの好きな花が出てくるからだ。
三番はいちばん悲しい。いちばん悲しくて、愚かで、仕方がない。
仕方がないこと、それがわたしはときどき好きだ。
そうでなければ、好きでいなければ、わたしはわたしらしく生きられないのだとおもう。
仕方がないことが、わたしを支えて、残酷な現実がわたしを支えて、暗い路地で売られる人身や薬草がわたしを支えていく。
そういう薄暗さがなくなったら、世界はどんなに醜くなるだろう。
美しいだけのユートピア。
幸せなものしか生き残れない国。その集まり。
幸せになりたい。
わたしもなりたい。
だけど、だれかを押し退けてまでなりたいとは、おもったことがない。